「大本営発表」という言い方がある。
大東亜戦争(太平洋戦争)のミッドウェー海戦あたりから、負けているのにあたかも勝っているかのような発表をし、国民を騙し続けたことから「信用できない虚飾的な公式発表」のシンボルとして使われる。
先鋒を担いだのは大新聞などのマスコミ。
軍の検閲に引っかかるからと、発表のまま報道した。それどころか「自主規制」として、軍部発表をさらに虚飾的に仕上げ報道してもいた。戦意高揚だからと。「新聞は国民の声を代弁している」などと正当化し、実際には世論誘導である。つくづく暗い時代だった。
▲ 日本海軍は4隻の空母をこの海戦で失ったが、国民にはこれを隠し逆に大戦果と報じた。
暗い時代といえば、今もそうかもしれない。
日本には戦前から「記者クラブ」というのが存在し、現在も約800もの記者クラブがある。主に大手メディアの記者からなり、官庁に記者室を作ってもらい、そこに詰めている。過去GHQに解散させられそうになったが、なんとか生き延びた。なにか交換条件があったのかもしれない。マッカーサーを称賛してみせるとか。お上に取り合うのは得意とするところである。
▲ マッカーサー称賛はいまに続く?
記者クラブは日銀や財務省内にも、もちろんある。
例えば「日銀記者クラブ」は大新聞とテレビの記者のみ出入りできる。フリーのジャーナリストや雑誌記者は立入禁止だ。格式を重んじるのかもしれない。都合の悪い報道をされたくないだけかもしれないが。こんなプレスクラブは世界でも日本だけである。日銀総裁が会見に出席しようものなら「起立、礼、着席」とうやうやしく迎え入れられる。金融ネタの最大ニュースソースは日銀だ。IMFやOECDにも影響があり、手なづけてもいる。いずれも金融報道をする記者にはとてもありがたい存在だ。だからこれからも日銀記者クラブに出入りさせてもらうために、せっせと日銀に都合の良い記事を書く。批判めいた事を書けば編集デスクから「こんなこと書いて、お上は承諾してんのか!」などと叱責される。骨のある記者はとても続かないだろう。
いうまでもないけど、これでまともな報道なんて出来ない。たぶんお上から言われなくたって「自主規制」してみせるのも伝統だ。官庁にとって都合の悪い政治家が出てくれば、これも叩く。「国民の知る権利を守る」とその実、世論誘導に勤しむ姿に、ジャーナリズムなんてロマンチストがみる夢のように感じてくる。
新聞を毎日読んでいると、とても不況がデフレのせいであり、それが日銀の手落ちであるとは考えられないようになる。さらに財務省記者クラブによる報道のおかげで、消費増税はデフレ時であっても仕方がない、と思うようになる。官庁にしつらえた犬小屋のような記者室では、忠犬たちがエサほしさに今日もしっぽをふる。
デフレ時に消費税率をあげればかえって税収が減るのは、97年に立証済み。
それでも財務省が消費増税に邁進したいのは、もはや税額の多寡ではない。利権の確保である。財務省は消費税率を上げる一方で、軽減税率というアメを「誰に与えようかな」と、もったいぶってみせる。そこでさっそく日本新聞協会がさりげなく手を挙げる。
「ぜひ日本新聞協会に軽減税率の適用を」
だがそんなことはもう、とっくに決定済みなのだろう。御用学者も含め、新聞たちは実に財務省に都合よく活動してくれた。消費増税賛成報道に加え、見返りもある。さっそく財務省官僚が読売新聞の本社監査役として天下っていった。
報道規制のある中国や北朝鮮のひとたちをぼくらは憐れむ。共産党の都合のいい事ばかりで事実を隠蔽され、報道の自由がないと。ネットで都合の悪いサイトへアクセスしたり検索できなくするなどわかりやすい形で統制するのが中国。そのいっぽうで、わかりにくい形で統制されているのが日本国民かもしれない。
残念ながらそうはいかないけど。
いいか、ミニきち。そういうわけにはいかないんだ。
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