一粒で3つ味わえる街

昨日の夜着き、明日の便で帰る。
前回に引き続き、今回のKL(クアラルンプール)の滞在もそんな感じだった。弁護士事務所を訪れ、それこそ腱鞘炎になるくらいにたくさんの書類にサインしてしまえば、あとはもうすることがない。というのも申し訳ないので、時間の許す限り、街のあちこちを見学して回った。

それにしてもKLは、ひとつの都市にマレー、中国、インドの街のエッセンスが散りばめられている。いや、それぞれが生活圏ごとに区分けされている。食べるものが違うし、祈る場所が違うのだ。通う学校も職場も分けられているようだ。だからブロックをいくつかまたげば、そこはもう違う国のようである。半分は中華系じゃないかと思うほど華人は目立つが、人口構成比率は3割以下。マレー人が過半数で、インド系が1割くらいといったところだ。よくまあ喧嘩しないものだと感心するが、たぶん互いに文化が違いすぎるからだろうと友人も言っていた。良い意味での無関心といったところか。

タクシーを北に十数キロ走らせれば、バトゥケイブ(黒風洞)がある。1988年、初めてKLに来た時に連れてきてもらった記憶がある。そのときにはなかった黄金に輝く巨大なムルガ神の像が立ちそびえてびっくりしてしまった。


▲ 横の200段以上の階段と比べるとその巨大さがわかる

ここはそこだけが石灰岩でできている不思議な山で、鍾乳洞の中に巡礼者がお祈りをしている。270段の急な階段を登ると突然あらわれる洞窟は圧巻。インド以外では世界最大のヒンドゥ教の聖地である。


▲ 洞窟のようす


▲ 階段の途中で猿の親子に出会う


▲ 視線を感じて見あげればそこに


▲ 象の神さまが勢ぞろい


▲ 羽もあればシッポは孔雀、乳もふたつ。目があって息が止まった


▲ まるで、おとぎ話の一シーンのよう

KLの街を歩いて目立つのは中華系マレーシア人。
本土の中国人より、ずっと人なつこい印象がある。反日感情もほとんど感じない。不動産エージェントのジュリエットも弁護士のアイビーも中華系だ。商売上手で勤勉なため、きっと裕福だろうと思う。事実、コンドミニアム系の高級不動産所有者は中華系が多い。対してマレー人はやや老朽密集化した都市周辺に追いやられている感じだ。こういってはなんだけど、ちょっとなまけ者という印象を受ける。


▲ これがジュリエットさん、きょうのお召し物はベッドカバーのようである

だがマレーシアはマレー人のもの、という意識があるためか、国営や政府関係の仕事は優先的にマレー人を採用している。ツインタワーで有名なペトロナス社は国営石油会社。従業員のほとんどはマレー人である。

極めつけは新行政都市、プトラジャヤ
タクシーを30〜40分走らせれば到着するが、「これがマレーシアの都市か!?」とびっくりするくらい近代的で、前衛的な巨大建築物が立ち並ぶ。中央アジアサマルカンドを思わせるものがある。だが同時期にしかも集中的に建てられたにもかかわらず、建物のマスターデザインがみられずバラバラな感じがした。人工の実験都市といった感じだ。


首相官邸、国教はイスラムである象徴


▲ プトラモスク。アジアでもっとも大きなモスクになる


最高裁判所、これもイスラム建築。つまりイスラム教で裁く、ということか

ここでは中華系、インド系をシャットアウトし、まさにマレー人によるマレー人のための都市といったふしが見られる。建物のほとんどはイスラム教のスタイルだ。広場には万国旗がはためくが、すべて中東などイスラムの国々のものだ。そこには欧米や中国、日本の旗はない。

まるで香港の女人街のような一角にセントラルマーケットがある。そこに「足の角質を食べる魚」がいるという。いわゆる「フィッシュ・スパ」というやつだ。以前テレビで見たことがあるが、ここのフィッシュはとんでもなく大きくてびっくり。10分で130円という安さにもひかれ、やってみた。


▲ 植民地時代の古い建物も


▲ くすぐったくて足が水になかなかつけられない


▲ 魚は大きく、見た目にはピラニアのそれである

くすぐったくて、とても足をつけていられない。だけどだんだん慣れてきて、いつしか気持ちよくなってきた。だけど絵的には食べ物にありつくピラニアのそれである。あっというまに骨になってしまうんじゃないかという気がした。白人の女性たちもやっていたが、悲鳴を上げて水につけては上げ、つけては上げを繰り返していた。いい腹筋運動である。このフィッシュ・スパ、見かけはおっかないけど確かに足の裏がつるつるになった。ふつう魚は食べるものだが、逆に食べられるのもいい経験である。でも米国やカナダでは感染症を心配する人達もいるという。まあ、ほどほどにというところだろうか。

そんなわけで、居ながらにしてインド、マレー、中国を味わえるKLはなかなかオススメです。エアアジアで片道1万6千円とかで行けるようだし。機会があればぜひ。

おみやげ

▲ 宿泊代払うつもりだったのに「いいから」と管理会社は受け取らない。そして「プレゼントです」とこれがテーブルの上に・・(後ろはホンモノのツインタワー)

8 件のコメント

  • ご無沙汰しています。
    マレーシアは「ブミプトラ政策(でしたっけ?)」などといったマレー系優遇政策を取っていましたよね?今も続いているのか、名残があるのかは知らないのですが、今回の記事を読んでいて遠い記憶が少しよみがえってきました。
    その影響か、シンガポールは中華系が多かったような記憶もあります。
    それにしてもいたるところにイスラムの影響があるのですね。政教分離がどこまで行われているのか確認してみたいところです。
    フィッシュスパ。一度経験はありますが、こんなピラニアっぽい魚ではありませんでした。この魚だったら、僕は挑戦しなかったかもしれません・・・。

  • たくさん写真アップしてくださり、ありがとうございます。
    なんだか私の器がもし大きくなれたら、こんな感じなのかな?っていう感覚まで体験させてもらえてワクワクします♪

    マレーシアに行ってみたくなっちゃいました。

  • 決めた!
    決めました!
    10年以上封印して来た海外旅行の、再開の地はマレーシアに♪
    。。。。いつになるかな。。。。♪

    なおきんさん、写真はもっともっと見せていただきたいですよ^^

  • 魚!デカイっ これは怖いっw でも足を突っ込んでみたいっ
    角質だけ食べてこんなに大きくなったんでしょうか…ブルっ

    今回の記事読んでたら、マレーシア行きたくなりましたよ。
    画像も素敵!
    離島しか行ったことないので、次回はKLの街を歩いてみようと思います♪

  • ちょうど半月ほど前、娘が修学旅行でKLに行きました。同じ写真が並んでいてなんでか嬉しくなりました。もっとメジャーな場所があったのでは、と思っていたのですが、娘のカメラに収められた写真を見て、ステキな所だなぁと羨ましく思ってたところです(笑)世界は広いのですよね。いつか行けるかな?

  • 確か5〜6年前にKLへ初めて行きました。
    ツインタワーがとても官能的なたたずまいだったのが印象的です。なおきんさんがおっしゃるように、3つの文化が混じり合っていてその部分が私にとってはとても興味深く、食べ物もいろんなジャンルのものがありとても美味しかったです。また行きたいと思う場所です。その時は是非ともなおきんさん所有の部屋に宿泊させていただきたいです!

  • mu_ne_2さん、一番ゲットおめでとさまです!
    シンガポールの誕生は、マレーシアから中華系政党が追い出されたことがきっかけでした。今ではちょっと想像できないんですが、リー・クアンユーは悔しくて泣きながら独立宣言したそうです。英国植民地時代は華僑が要職についてマレー人は2等国民扱いでしたから、その反動もあるのかもしれませんね。フィッシュスパはこそばゆかったです。
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    はてなさん、
    マレーシアはいろんな顔を持っています。そのどれもがひとつの国のようにユニークで、旅をしていても楽しいですね。まあぼくはちゃんとマレーシアを旅してはいないんですけど、おすすめです。
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    ラム子さん、
    おお、10年も封印されていたとは、海外旅行。KLだけでなく時間が許せばマラッカやイボーなどいかがでしょう。とてもノスタルジックな街並みのようです。写真、お言葉に甘えて次回はじゃんじゃんと。
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    phoo主婦さん、
    でかいですよね、あの魚。あれだけ人間の足の裏の角質を食べてるんだから、逆に食べたらどんな味がするんだろうかと思いました。マレーシアは都会もなかなかいいですね。でも旅なら田舎かも?
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    tomokoさん、
    ああそうでしたか。娘さん、修学旅行ですか!もしかしたら中国の予定を変更されたとか? バトゥ・ケイブは定番でしょうね。足腰の運動にもなるし。世界は広いです。ひとつの人生では足りないほどに。さあでかけましょう。
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    Rachealさん、
    夏に行ったコーカサス地方は互いの国がそれぞれ中が悪く、宗教や民族ってのは争いの元だなあ、なんて思ってましたが、KLを垣間見て考えを改めました。次回KLへ行くときはぜひ!いただいたコメント、「所有」部分を見落としてドキッとしてしまいました。

  • お写真、とってもお上手です^^ 昨年、エアアジアで初マレーシアに行きました。またいきた〜い♪って禁断症状が…
    コンパクトデジカメのシーンモードですか?

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    ABOUTこの記事をかいた人

    なおきんプロフィール:最初の職場はドイツ。社会人歴の半分を国外で過ごし、日本でサラリーマンを経験。今はフリーの立場でさまざまなビジネスにトライ中。ドイツの永久ビザを持ち、合間を見てはひとり旅にふらっとでるスナフキン的性格を持つ。1995年に初めてホームページを立ち上げ、ブログ歴は10年。時間と場所にとらわれないライフスタイルを めざす。