中身がわからないのにそれを買う人がいる。
福袋がそうだし、ガチャガチャもそうだ。
ガンプラ付きのガムやチョコもこのたぐい。
シール目当てで子供たちはビックリマンチョコを買うが、
中に欲しいシールがあるかどうかはわからない。
なにが入ってるかわからないのに買うなんてバカね
などと、外国人たちは、身もフタもないことをいう。
そのような、他国ではみかけない商法に
よほど日本人はギャンブル嗜好が強いのでは?
と早合点してしまいそうだ。
事実、そうなのかもしれないが。
定価を足し合わせれば、確かにお得感のある福袋。
だが自分には不必要なものばかりが入っているし
そもそも在庫処分的な商品がないとも限らない。
だのに初売ではあれだけ人が並ぶのだ。
世界のApple Storeですら、日本限定で福袋がある。
あのしくみ、ほかで活かせないものか?
たとえば飲食店など、どうだろう。
飽食ニッポン、どこでも大抵のものが食べられる。
なに食おうかなあ・・ と店選びでさまよう飽食難民。
どれにしようかなあ・・とメニューを見てさらに迷う。
もしかしたら「あなた、きょうはこれを食べなさい」
と誰かに決めてもらいたいだけなのかもしれない。
それが「天の声」ならば、なおよしと。
そこで「クジカフェ」
店にはなんとメニューというものがない。
代わりに入口には「おみくじ」と書かれた券売機。
お客は500円玉をそこに放り、番号札を手にする。
その番号で、本日の定食を占ってもらうのだ。
29番、大吉。サバの味噌煮定食
どうしてサバが大吉なのか、見当もつかない。
だがそこがミソなのだ。
意味はないが、深い味わいがある。
また、定食に添えてあるナプキンには
おみくじらしく「ありがたい今日のお言葉」
がしっかり印刷されており、道が示される。
空腹どころか、心も満たしてくれるのだ。
そんなきっかけをくれる「クジカフェ」。
500円でサーロインステーキが食べれる時もあれば
500円も出して、卵かけごはんだけの時もある。
すべては開運、おぼし召しなのだ。
だれか開店してくんないかなあ。
行かないけど。
■ミニコラム『おかんと福袋』
なにを隠そうぼくのおかんは大の福袋好き。「5000円の福袋に3万円分の服がはいってるのよ!お得じゃない?」そういってはせっせと正月から買い込む。でも袋に入っている衣服のほとんどはおかんには小さすぎたり、デザインがあわない。だからといって、とくにがっかりした様子もなく、そんな服を妹や叔母にあげたり、近所で親しい人に配ったりしている。「ねえ、すごくお得だったのよ」と。お得だったのはむしろもらった人のほうだが、そんなことはかまわない。だいいち、おかんはなんだか楽しそうなのである。もし福袋に意味があるとするなら、きっとそういう好意の交換性、引いてみれば物語性なのだと思う。おみくじもビックリマンチョコも、人々がもつ物語への渇望を満たすツールなのだ。だからわざわざ話題のラーメン屋にだって並ぶし、運を伴うシールを集める。きっと「おみくじ定食」なんてものがあれば、その物語(ネタ)を伝えようと、あちこちでささやかれちゃうにちがいない。
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