ネットあるものはなんでもタダ!
という考えから、少しずつ考え方が変わり、「必要に応じてお金を払う」習慣が定着した。音楽、映画、読み物といったコンテンツを買うことに、以前はあったためらいがなくなった。10年前なら、メルマガにお金を払うなんてちょっと考えられなかったが、電子書籍が普及してみるとメルマガを買うのに抵抗がなくなった。隔世の感があるが、その背景に安心して決済が出来るようになったという側面もあるだろう。
おかげでつい買い過ぎてしまうことも。
リアルショップへ買い物に行けば、商品という実感がその手触りや重さでわかる。買い物かごに商品を入れれば重くなるし、かさが増える。「このへんでやめておこうかな?」というまともな抑止力が働きやすい。商品を勧めすぎる店員の煩わしさを除けば、五感が使えるリアルショッピングは人間の行動に抑制がかかりやすい。ネットではこのあたりの実感がわきにくいことも原因だと思う。真夜中の買い物については、特にそうだ。
連休明けの株式相場は値崩れが激しかった。
煮え切らないギリシャ議会問題の影響が大であるが、数少ない日本経済の牽引役であったグリー社とDeNA社などソーシャルゲーム大手各社の株価が下がったことも要因。理由はコンプガチャの中止を消費者庁が要請したとの報道を受け、これらの収益基盤を失うだろうという予測によるものだ。
「コンプガチャ?なんだそれ?」
ソーシャルゲームをやらないぼくのようなオジサンにはちんぷんかんぷんである。
「無料」に誘われゲームを始めてみれば、いつのまにかお金を払わずにはいられなくなる。そんな魔性のような錬金術で収益の源泉となっているのが、このガチャ(コンプリートガチャ)である。稀少性のアイテムほしさにアツくなる子供たちや同類の大人たちをして、この術にかかれば、出費に抑制が効かなくなるのである。調べてみれば、なるほどよく考えられている。興奮するゲームの只中にあっては、そのバーチャル性にリアルな金銭も「仮想化」されてしまうのかもしれない。またその時点では、今月自分がいくら使ったのかもわからない。あとで、請求書を見てびっくり!というわけだ。その請求書を見るのはその子の親、だったりもするのだが。
原価たったの1割で、3400億円を売り上げるソーシャルゲーム業界はそろそろ叩かれる時期だったのかもしれない。リーマンショック以来、誰もが節約しながら凌いでいるこの4年間で、なんと70倍も売上を増大させた。
消費者庁が動いたのも無理はないが、これに想起されるのはホリエモン。国を敵に回しやすいのはたいていこうした新参者である。昇竜のDeNAは昨年球団も買ったが、これを反対していた人たちは分別あることを自負する「大人たち」であった。いま彼らは「ほらみろ」という心境だろう。
だが深い問題は、歴史ある業界のほうにこそある。
「失われた20年(ぼくはこの言い方が大嫌いだが)」などと云われるこの時期に、およそ840兆円も市民からお金を巻き上げたパチンコ業界。年間売上にして42兆円!。まったくとんでもない金額である。ほぼ日本政府の年間税収か、それ以上だ。対してソーシャルゲーム業界売上は3400億円。パチンコの規模に比べれば、はした金にすら思える。
▲ サラリーマンっぽい人たちもフツーにソーシャルゲーム
「子供だから」「ネットだから」と、政界や経済界にコネの薄いITベンチャー企業ばかりを叩くのも不公平だと思う。景品表示法から照らせば、カードとレアアイテム交換も、パチンコ玉で景品交換も変わりない。公平に考えればパチンコ業界も同罪。あとで自殺者が出るほどの「射幸心」を鑑みれば、罪はさらに重い。
罪も重いが腰も重い。
誰も、そこはつっこまないままなのだ。
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