先日、池上彰のTV番組で国民ID制のことが特集されていた。
そのメリット、デメリットが解説され、ひな壇のタレントがこれに賛成だの反対だの言っている。ふむふむとテレビを消さずにいると、デメリットとして「国民ID制になれば、複数の収入源に対し一括で税の取立てをされてしまう」などと解説されていた。思わずイスから転げ落ちそうになる。それ、税の申告漏れ防止だからむしろメリットである。
さらに「国民ID制にすれば一体誰がトクするでしょう?」とふり、「財務省でーす」と答えてみせる。「え!?」と口が半開き。そりゃまあ財務省はいろいろ問題があるけれど、年間10兆円から12兆円もあるといわれる税のごまかしは、国ぜんたいの深刻な問題である。ちゃんと徴収されていれば消費税5%ぶんの財源になるのだ。まともに番組を作るなら「国民ID制が浸透していれば、今回の消費増税は必要なかったかもしれません」くらい言ってしかるべきだと思う。
国民ID制については、ぼくも何度かここに書いてきた。
一律かつ強制的に、国民をひとりひとりID管理できていないことのデメリットは意外に多い。役所で書類ひとつ受け取るにも本人確認書類がいちいち必要だし、管理がバラバラだから手続きでたらい回しにされる。払ったはずの年金が消えたり、死んだ人が生きていることになったりする。ID制度がないことで得をしているのは「世間の目に隠れて大金を儲けまくりながら税金を一銭も払わない特権集団」と「国内でスパイ活動をする外国人(なりすまし日本人)」である。
他国ではどうか? たとえばドイツ。
ドイツではIDカードを携行する義務があり、外国人は代わりにパスポートを携行し、求めに応じて提示する義務があった。ある日ぼくは警察に呼び止められ、たまたまパスポートを持っていなかったため署に連行されそうになる。自宅に連絡をし(たまたま近所だったので)、家族にその場に持ってきてもらい、なんとか事なきを得た。また、定期的に外人局(Ausländeramt)へ出頭し、ビザや書類の更新と審査を受けた。そこにはぼくのための分厚いフォルダがあり、納税証明やら健康保険支払い証明やら犯罪履歴(ないけど)やら年金支払証明などがびっしりとファイリングされている。ぼくのようにドイツの永住権を持つ外国人のフォルダは、半永久的に保管される。
不思議なことに、在日外国人に対しドイツ同様のことをすると「非人道的だ」といういう人たちがあらわれる。何かの勘違いだろうと思っていると、朝日など日本の主要紙までが同じことを書きたてる。『朝日新聞』が『朝鮮日本新聞』の略ではないかと疑うのはこんなときだ。でも単に「外国人への思いやり」なのかもしれない。ならばわからないでもないが、防諜上ではNGである。おまわりさんに職務質問で呼び止められたとき、身分証不携帯でもとくにとがめられないのが日本。その意味でも不法滞在者や工作員にとって日本は地上の楽園。「思いやり」は、アダで返される。
こんなふうに脱税者や各種犯罪者、さらには密入国者や外国人工作員を国内であぶり出す手段がない。あるいは資産があるのに生活費に困っているフリをして生活保護を受給する人たちを判別できない。だから犯罪や不正にまったく無縁な人たちまで疑うしかないのだ。
たとえばこの国でアパートの部屋を借りたり、会社へ就職するには「保証人」が必要だ。これを言い換えれば「あなたは信用できませんから身代わりを立ててください」ということである。ぼくは欧州やアジアでアパートを借りたり、企業に就職したりしたが、保証人を要求されたことはない。ぼくが信用に足る人間であることを、IDによって管理されていたからだ。
こうして日本人が罪なき他人を疑っているあいだにも、国際社会は日本を「防諜に問題アリ」として疑っている。同盟国であるはずの米国はとくに疑っているフシがある。日本のさまざまな分野(政・官・学・労・メディア・宗教)で影響のある有力者が、韓国や中国のエージェントとして育てられている可能性があるからだ。
軍事大国になるからと防衛費はGNPの1%以下と決めるいっぽうで、不法外国人でも受け取れるくらい審査の甘い生活保護や子ども手当(2012年3月31日廃案)が施行されていることは、やっぱりヘンだ。防衛費は年間4.7兆円に対し、生活保護と子ども手当はあわせて7兆円もかかる。「日本は平和国家だから」というが、平和でいられるかどうかは周辺諸国が決めることでもある。
兵器の性能は上がり、維持コストも年々かさむ。だのに予算が減っているということは、自衛隊は実質的に戦力ダウンしているかもしれない。周辺諸国(主に中国)もこれに合わせて軍事費削減しているなら問題ないが、逆に増えているのが実情だ。中国のGNPは日本を超えたが、彼らの軍事費はそのGNPを11%も占める。日本を攻撃するミサイルは増え続け、軍艦も戦闘機もパワーアップしている。ぼくは戦争には大反対だけど、平和は抑止力があって維持されることくらい知っている。「日本を攻撃したら相当痛い目にあう」と相手に思わせることが大事なのだ。平和を祈るだけなら新興宗教でもできるが、現実の戦争は彼我のパワーバランスが崩れれば「より起きやすく」なるのである。
▲ 中国海軍ソブレメンヌイ級駆逐艦
米国は日本と軍事同盟を結び、中国を仮想敵国としていながら、中国と領土問題で密約をしている日本をどこか疑っていた。尖閣諸島がまさにそれだが、中国漁船が派手に騒いでくれたおかげで国際世論に知れることになった。体当たり船長は中国帰国後「英雄」になるはずだったが、あとで戦略ミスだったと判断されメディアから消された。
▲ 尖閣諸島
石原都知事の「尖閣3島を東京都が買う」発言は、自民党時代に日本政府と中国との間で結ばれた密約を打ち消したことで画期的だ。東京でなく、ワシントンで発言した意味はここにあると思う。米国が持つ疑いをちゃんと晴らしておきたかったのだ。
世界の関心を買いつつ、島を買う。その後国に転売するかもしないし、国が最初から買い上げるかもしれない。どちらでもいい。そして世論をもってそこに自衛隊の小部隊を置く。ここが肝心である。たかが小部隊というなかれ、これで中国は尖閣に手出しができなくなる。中国は「先に攻撃したほうが悪い」戦法を徹底しているから、日本の守備隊のいるところに軍事攻撃してしまえば、大義を失う。米軍も敵にまわすことになるし、人民に説明が出来なくなる。
領土問題における国際世論は非情なものだ。
いくら正論を並べ立て「自国領である」と主張しようと、守備隊も置いていない離島を奪われれば、そこはもう自国領ではない。竹島もそういう意味で国際社会では「韓国領」ということで認知されてしまった。「実効支配」こそがモノを言うのだ。イヤなら1982年に英国がアルゼンチンにフォークランド諸島でやったように、軍事攻撃で取り返すほかない。そのとき世界は「日本が韓国に戦争を仕掛けた」というふうに見えるはずだ。こうなると米軍も自衛隊に加勢しにくい。つくづく尖閣に竹島の二の舞はさせたくないと思う。そこには日本を救う資源もある。
いま日本には、北朝鮮のエージェントだけで2万人も潜伏しているという。彼らは普段はサラリーマンであり、主婦となって潜む。外観からは判別できない。同じく中国や韓国のエージェントも多い。彼らは戦争になれば、日本に破壊活動などして間接侵略をおこなう。いまさら国民ID制を徹底しても、彼らをあぶり出すのは容易でないかもしれない。だが抑止力にはなるはずだ。入国管理局や警察もマークしやすくなるからだ。
そうなっては困ると、彼らはこれまでやってきたように有力者を使ってID制度導入を遅らせるようしむけるだろう。メディア工作を仕掛け、サイバーテロを効果的に使うかもしれない。監視されてしまうだの、徴兵制になるだのと、ID制度にお決まりのパターン反応で反を唱える人もいるだろう。前途は多難だ。だけど後戻りはできないところまできている。
ID制度はなにも財務省のためではない。
他ならぬこれからの日本国民のためである。
子々孫々、日本が日本であるために必要なのだ。
ひさしぶりの社会派記事でした。長い文章でつくづく申し訳なく思います。これでも半分くらい削りました。もっとやろうと思えば削れたんだけど、まあこのくらいで許してください。国民ID制度は野田政権になって実現に拍車がかかっています。結果的にはありがたいんだけど、野田さんの場合、財務省が望むことはなんでもする姿勢なのがちょっと気になりますね。ともあれ、ここのところ中国からだと思われるスパムメールに悩まされています。この手の記事を書くと、また増えそうですね。へこたれないけど。
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