2年以上前になるだろうか『メモリー・テープス』という奇妙な名前のグループを知ったのは。犬の鳴き声で始まる”Swimming Field”が一曲目にはいった”Seek Magic”というアルバムはあまりにも自然にiPhoneにダウンロードされ、以来、勝手に鳴りだしているんじゃないかと思うほどよくプレイされる。
それはほんとうに何の変哲もないアルバムで、だのにとても印象的で、次々に頭の中に風景やら何やらがイメージされてくる。すると次々に写真をフォトショップにロードしては、ぼくにレタッチさせてしまうのだ。19歳の時からぼくの頭に巣食っている変な虫に、直接シグナルを送っているかのようである。
メモリー・テープスはあまり聞きなれないチルウェーヴ(chillwave)という音楽ジャンルである。インディのクラブミュージックの一種で、ループ、サンプリング、ボーカルイフェクトがされたシンセポップ。80年代ポストパンクを経て、ベルギーのクレプスキュール・レーベル系を少しビビットにした感じだ。
もう50のほうが近いぼくのようなオジサンが聞くような音楽ではおそらくないし、そのように作ったつもりもないだろうが、脳に巣食う虫にちょっかいを出させるにはすごく都合のよい音だ。エクスペリメンタルなノイズミュージックが好きで、90年代に中途半端にオトナになってしまったような人に効くのだろう。
眠りの浅い春の夢のようなミュージック。
仕事ばかりしていい気になっている左脳にガツンと食らわし、枯れた右脳に潤いを与えてくれる。このアルバムで一番好きな”bicycle”という曲には、前に進んでいるようで実は逆進している未来を思わせるところがある。
それにしても最近の写真の撮りようはどうだろう。
きょう載せた写真はすべて iPad で撮った。10インチ近くあるファインダーがついたカメラは他に類を見ないが、これほどまで脳裏に描いたイメージをダイレクトに切り取るカメラも他にない。「iPadにカメラなんてバカみたい」と多くの人が思ったかもしれないが、iPad2ではたしかにそうだったかもしれない。でも第三世代iPadからはこれもアリだ。
これまで撮りきれなかったものが写りそうな気すらする。
まるで眠りの浅い春の夢のように
シャウトする。
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