老後が心配、でも年金は払いたくない。
そんな声がちらほら。とくに若い人たちに多い。
無理もないと思う。
日本の年金は賦課(ふか)方式、つまり現役で働いている人が払い込んだ金を現在の高齢者に支給する仕組みだ。現役がますます減り、年金受給者が益々増える日本。これじゃもたない。若い人ほど、現在払っているお金より少ない年金を受けることを意味する。だったら年金なんか払わず、そのぶん、自分の将来に備えて貯めたいというのが人情だろう。
世界を見渡せば、年金の賦課方式をとっている国は軒並み財政赤字である。しかも赤字幅はふくらむいっぽうである。
年金の世代間格差は深刻な問題だ。放置できない。
最近の若者はお金を使わない、なんてことが言われるが、そりゃあ使いたくもなくなる。老後は年金だけじゃ生きていけないことを肌身で感じているのだ。こういう社会はなかなかしんどい。前向きに生きたくても、なかなか後のことが気がかりで、つい後ろ向きになってしまう。
おまけに「消えた年金」がどーのと管理がどうもずさんで、だいじょうぶかという気もしてくる。フリーターとして暮らす人達は厚生年金などは高すぎて払えず、かといって国民年金の受給額だけでは生活できず、不安は増すばかりだ。
そこで消費税を年金の財源にできないか、考えてみた。
それも英国・イタリア並みの20%。
一気にここまで増税する。
「なんだよなおきん、増税には反対じゃなかったの?」
と言われてしまいそうだけど、年金とバーターなら話は別だ。これで、毎月厚生年金を払うことなく、65歳になれば誰でも10万円、夫婦で20万円の受給が死ぬまで保証されるのだから。社員も、派遣社員も、パートも、フリーターも。
消費税というのは各種税収の中でもっとも安定している。法人税は企業が儲からなければ減るし、所得税も収入が減れば減る。景気に左右されやすいのだ。消費税こそは安定財源、年金のように固定で発生していく支払いにはうってつけだと思う。
▲ 1997年以降の、所得税(青)、法人税(赤)、消費税(緑)の税収推移
北欧や西欧などの福祉国家の消費税が高いのもうなずける。
年金受給者の数はこれから2040年まで増え続ける。
もしひとりあたりひと月10万円(年120万円)ずつ払えば、それぞれこのくらい必要だ。(左:年金受給者数、右:必要年金額)
2010年 約2930万人 35.1兆円
2015年 約3380万人 40.5兆円
2020年 約3600万人 43.0兆円
2030年 約3670万人 43.6兆円
2040年 約3850万人 46.2兆円(ここがピーク)
2050年 約3760万人 45.1兆円
現在の国の年間税収が42兆円であることを思えば、すさまじい金額である。福祉国家を運営していくのはラクじゃないのだ。いっぽうで、消費税1%あたりの税収は2.3~2.5兆円である。ということは20%ぶんの消費税は50兆円弱もある。これならピークの2040年でもだいじょうぶだ。
物価が15%も上がったらとても生活できない!とあなたは悲鳴を上げるかもしれない。ところがそうでもないのだ。たとえば年収240万円の人がいるとする。月収20万円、そこからいろいろ引かれて手取りは17万円程度。17万円をすべて消費に回していたとして、15%物価が上がれば19万5千円かかる。収入が同じなら毎月、2.5万円も節約しなくちゃならない。これはなかなかしんどそうだ。
だけど厚生年金を払わなくていいとなれば、そのぶん1.65万円手取りが増える。会社も同額を負担しているから、これを給料に還元してもらえば3.3万円。これが手取りに加算されるのだ。合わせて20.3万円。物価上昇ぶんは吸収され、おつりがくる。
従業員の生活は苦しくならず、会社だって負担が増えない。
あなたの給料明細の厚生年金額はいくらだろうか?
これの2倍が手取りになるとしたら?
増税ぶん15%を差し引いても、おつりがくるかもしれない。
もちろん増税には減税がセットでなければならない。
諸外国と比べても日本の法人税は異常に高い。企業努力だけでは韓国や新興国の企業に、太刀打ちできない。あげく人件費が削られ、従業員の生活にしわ寄せがくる。
EUや中国、韓国、台湾の法人税は17%から多くて33%、対して日本は42%もする。世界のトレンドは、法人税をどんどん下げて競争力を上げているのに、日本はそうはなっていない。
そこで実質20%まで下げてはどうか?
税収が減るなどと心配することはない。どうせ企業に儲かってもらわないことには法人税など増えないのだ。それに20%まで下げたところで、せいぜい8兆円減る程度。それなら消費増税ぶん(50兆円弱 – 年金40兆円)の差額でまかなえる。
企業にとっては8兆円の減税は朗報だ。
まず従業員の給料を上げることができる。より多くの社員を採用したり、ボーナスを上げた企業にはそのぶん、税の優遇処置を与えれば、減税分が経済の活性化につながりやすい。つまり、生活費が潤えば人々の消費も増える。めぐりめぐって、企業は儲かるのだ。正のスパイラルである。
それから最後に65歳以上でも働きたい人には存分に働かしてあげればいい。年金を減らすとかそんな必要はない。もれなく10万円、その上働いたぶんはまるまる所得だ。ただでさえ20年後には今より労働力が1000万人減っちゃうのだ。元気な高齢者は経済活動に必要だ。ぼくだって死ぬまで働きたいと思う。社会貢献したいと思う。
あなたの子供が、あるいは孫が、将来を憂うことなく一生懸命働き生活を謳歌できるように、現役のぼくたちが、あるいは退役したひと達がやるべきことは多い。
既得権をある程度犠牲にしてもだ。
持続可能な社会、持続可能な高齢者、日本はもっともっと豊かになれるとぼくはわりと本気で思うのだ。
20代で「老後が心配」なんていう国は、あまりに暗すぎる。
【参考文献】『2013年 大暴落後の日本経済( ダイヤモンド社 中原圭介著)』『世界のお金持ちはどこへ投資しているのか(文藝春秋 五味洋治著)』『課題先進国日本(中央公論新社 小宮山宏著)』『略奪大国(フォレスト出版 ジェームス・スキナー著)』
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