「ところで、カワイってなんだ?」
日本へ旅行してきた外国人からよくそんなことを聞かれた。
甲高い声で「カワイイ!」といわれるとビクっとするそうだ。
直訳すれば、英語でCute、ドイツ語ならSuessだろうか。
答えるのにいつも困っていた。
キュートはたしかに「カワイイ」の意味で使われるけど
アメリカでは「快活な」のニュアンスがあり
イギリスでは「滑稽な」というニュアンスが含まれる。
日本語の「かわいい」はちょっと違う。
鎌倉時代末『徒然草』などでも登場する「かわいい」は
「見るに耐えない哀れなもの」という意味で使われていた。
酔っ払った坊さんが、小坊主に絡むシーンなんかがそうだ。
ぎゃーぎゃーいわれ、こづかれ、見るに耐えない。
作者の吉田兼好はそんな小坊主を「かわいい」と描写した。
あれから600年以上が過ぎ、意味合いが変わったのだろうが
いまでも「〜そう」と語尾をつければ「かわいそう」となる。
ぼくの定義する「かわいい」とは、対象として
まず「自分より弱いこと」が前提にある。
ひ弱で、頼りない。だから守ってあげたい、と。
でなければ「かわいげがない」ということになる。
つくづく「かわいい」は不思議な言葉だと思う。
たとえば「かわいい女の子」と「かわいい女」
同じかわいいでも、意味合いが違う気がする。
「女の子」のほうは、見た目がかわいい感じだが
「女」は、それより中身や性格の事を表している。
そんな違いがある。
また「かわいい女の子になりたい」と言えば、
それはオシャレをすることのように思え、
だれに対してもかわいくありたいんだろうなと思わせる。
が、「かわいい女になりたい」と言われれば、
性格を良くし、内面から磨きをかけたい意志に思える。
だれに対してでなく「特定の誰か」のためにという。
個人的には「かわいい女」というのが艶っぽいと思う。
森の妖精がそうささやいただけかもしんないけど 。
それはともかく
「カワイイー!」と呼ばれ、照れるオジサンがいるが
たぶん、あまりよろこんではいけないのだろう。
ぼくもふくめて。
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