「放射能には塩が効く」
先月、そんな風評が中国や香港で出回っていたという。
ひとびとは店に殺到し、なかには6.5トンも買い占める人も。
おかげで店から塩がなくなったりと、都市はパニック状態。
中国ではしばらく、食卓に塩辛いメニューが並んだのだろうか。
だとすればちょっとコワイ。
じわじわと身体をむしばむということで、
放射能被曝と生活習慣病は似ている。
国立がん研究センターの調査報告によると、たとえば放射線を100〜200ミリシーベルト(マイクロではない)浴びれば、そうでない人に比べ発がんリスクは1.08倍上がるとある。塩分の摂り過ぎによる発がんリスクは1.15倍。塩のほうが高い。
運動不足は1.19倍も上がり、肥満にいたっては1.22倍も上がる。
■ 放射線と生活習慣、発がんリスクの相対表
▲ 出典 : 国立がん研究センター報告(広島、長崎で被曝した44000人に追跡調査結果)をもとに作成
塩分とり過ぎによる発がんリスクは、放射線に直せば500ミリシーベルト被爆するのと同じである。毎時57マイクロシーベルトを1年間浴びる計算になる。これだけの被曝量、福島第一原発1号機の正面玄関あたりで暮らしているようなもんである。
だからといって、
「塩は危険だからみんな口にするな!」とはいわないし
「デブは危険だからみんな避難して!」ともいわない。
喫煙はもっとひどい。
発がんリスクは1.6倍である。
放射線なら、毎時228マイクロシーベルトを1年間浴びるのと同じ。不思議なもので、タバコを吸っていた頃は発がんリスクのことを知っても、じゃあやめようかという気にはならなかった。肺がんリスクといってもたかが1.6倍じゃないか、と。
それが放射能による被曝となれば、とたんに神経質になる。
人間というのはつくづく勝手なものだと思う。
それでも放射能は怖いと、あなたは言うかもしれない。
たとえば受動喫煙の発がんリスクは1.02倍だ。
あなたがタバコを吸わなくても家で誰かが吸っていれば、毎時5.7マイクロシーベルト被曝しながら暮らしているのと同じである。
5.7マイクロシーベルトといえば20km圏内避難区域なみ。
避難区域内にある自宅には住めないのに、同じ発がんリスクである喫煙者とは住めるというのは道理が合わないような気がする。
避難区域圏内から追い出され今は集団生活している人が「ストレスでタバコが増えた」とインタビューで話していたけど、こういう人たちはすでに風評被害者である。発がんリスクは避難所で暮らすことでより高まったのだから。
ぼくの友人にも、濃い味を好み、かつ運動と野菜が嫌いで、ヘビースモーカーの肥満男がいるが、発がんリスクは合わせて2.6倍という計算だ。
こうなるともう、放射能で騒いでいるのがばかみたいである。
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