東北に向けていた顔を、左に向ける。
そのずっと先にあるのは、中東と、北アフリカだ。
今にして思えば、あのあたりで「ツイッター革命」「フェイスブック革命」などと、まるで市民ネットによって悪い政権を倒したなどと喜んでいた日本のメディアがばかみたいである。チュニジアもエジプトも、長期独裁政権であったことは間違ってはないが、メディアがはやし立てるほど悪政を敷いていたわけではなかった。
「安定政権がなんであそこまであっさり崩壊を・・?」
事情通も不思議がる一連のできごと。その後の展開を鑑みれば、すべては予め描かれていたシナリオに沿って動いているようにもみえる。誰が描いたシナリオかは知らないが。
結局内戦になってしまったリビアで、反カダフィを錦の旗に軍事介入した英仏が早くも泥沼になっている。財政難にあえぐ欧州がなぜ膨大な戦費を使ってでもカダフィ軍を攻撃してしまったのか。
答えのひとつは石油利権である。
原油高に加え、福島の原発事故。エネルギーはもう原子力に頼れないかもしれない。加えてロシアや中国など非米国家たちの台頭。これが中東石油利権を奪われる焦りを呼んだ。英仏の誤算は米国の動き。これまでアフガンやソマリアで見せたように「民主主義を守る」などと十字軍ばりの役目を果たすことはなかった。
好戦的な英仏はハシゴを外された。が、引くに引けない。
次第に戦地から引いていく米軍の空白地帯を埋めようとしているのは、おフランスである。すでにアフガニスタン、コートジボワール、そして今回のリビア。めずらしく3拠点同時派兵である。ドイツはリビアにも戦争にも関心なし。イギリスはドイツとフランスが仲違いするほうが何かと好都合だ。老醜をさらすフランスのおかげでEUは経済以外でも破綻の危機である。戦争はトルコあたりがイスラム諸国と欧米側の橋渡しとして停戦の仲介に入るだろう。そうすればフランスはますます凋落する。トルコはフランスが嫌いだからだ。
無政府状態のチュニジアやエジプト。
なにが市民革命だ、と思う。
デモで盛り上がった若者は広場からどかされ、代わりに登場、扇動しているのはイスラム同胞団。逃げ出したチュニジア市民は北アフリカから地中海を次々に渡り、亡命。イタリアの小さな島ランペドゥーサに到着し、住民を混乱させている。なにしろたった5,000人の島に、18,000人もの不法移民してきたのだ。ジャスミン革命から始まった混乱は、こうして南欧にまで広がっている。
▲ ランペドゥーサはチュニジア、リビアの目と鼻の先のイタリアの島
そもそも市民革命を主導した「ワカモノ」はいったい、誰の支援を受けていたのだろう?手段はフェイスブックとケータイである。ずいぶん安上がりではないか。食料値上がりとリーマンショック以後の就職難が発端となったデモは、知らないうちに政権打倒に置き換えられていった。当時は誰もそんな事望んでいなかったのに。ただ、パンと仕事が欲しかっただけである。
メディアはいったいだれをスポンサーにこんな報道を繰り返しているのか、ぼくが気になるのはここである。このままアラブ諸国はイラン革命でみてきた世界を歩むのだろうか?
イラン革命。
親米政権が倒され、イスラム革命が起こるとテヘランの光景は一変した。男女の不貞は厳しく罰せられ、秘密警察が跋扈(ばっこ)した。女性は首以外を地中に埋められ、顔めがけて石をぶつけられて殺される。ふだん街を歩いていて、スカーフからちょっと髪がのぞいただけで捕まり、鞭打ちの刑に処された。容赦はない。「バンジ」というホメイニ師の革命親衛隊によって徹底的に取り締まられたのだ。
チュニジアやエジプトがそうなるのは耐えられない。
エジプトのムバラク元大統領の隠し資産5兆円が見つかった。
これはおそらく手から手へと渡り、奪い合いとなり、やがてはイスラム同胞団のものになるのだろう。安上がりに起こせるデモでごり押せばなんとでもなることを、彼らは知っている。
いったいこの大金は何に使われるのか?
復興資金?おそらく真反対である。
むしろ破壊するための資金に使われるのではないか。
世界に目を転じれば、もはや原発事故どころの騒ぎじゃない。
だが原発事故は、中東どころの騒ぎなないのかもしれないけど。
そしてぼくは途方にくれる代わりにちびきちを連れて散歩に出る。
世界のどこにも逃げ場はない。だから楽観こそは意志である。
なぜ、福島原発事故がアラブのいざこざに影響するのか?
どうか次回記事を待っててね。
最近のコメント