何年ぶりかで、ミュージック・マガジンを買った。
理由は『相対性理論』の特集。
アインシュタインではない。なんとこれ、バンド名である。
この音楽ユニットと出会ったのはiTunes Music Store。
たしか北京オリンピックの直後かそのあたり。まずその強烈なインパクトを持つバンド名に「おや」と思い、「やくしまるえつこ」のウイスパーボイスにやられた。
ジャケットにはそのボーカルの子が描いたであろうイラスト。
上手に韻を踏む歌詞もさながら、惹かれるのは「謎めき」だ。このバンドはほとんどメディアに登場しない。今の時代にあっては、情報は限られれば限られるほど深読みされる。
初アルバムは『シフォン主義』、一曲目は『スマトラ警備隊』。かわいい女の子の声で「やってきた恐竜、まち破壊〜」と歌う。
個人的には2作目のアルバム『ハイファイ新書』がお気に入りだ。
前作のパンクな荒削り感は抑えられ、やくしまるえつこのウイスパーボイスがより吐息感が増している。ヘッドフォンで聴いていると、ささやき声が妙に耳がくすぐったく、思わず「うふふ・・」となってしまう。傍から見てると、ただのヘンタイおじさんである。
新作アルバムは3月23日とあるが、震災のため発売が延期。
未発表3曲を含むリミックス版で、坂本龍一やコーネリアス、鈴木慶一なども参加しているという。これは聴き手次第でいかようにも聴けそうである。耳をくすぐられる感触が待ち遠しい。
気がつけば毎月買う雑誌のほとんどは経済誌かビジネス誌、ないしはIT系のそれである。これじゃバランスが悪い、ということで「ナショナル・ジオグラフィック」やペット雑誌を定期購読するも、音楽雑誌を買うことはごく稀である。
「ロック雑誌を買わなくなった時がおじさんだ」
そう周囲に吹聴していたのは高校生のころのぼくだったが、まあ当たっている。いつの間にか買わなくなっていたし、誰が見てもりっぱなおじさんである。
「次はどのアルバムを買おうか?」
80年代のぼくは、そんな毎日を送っていた。高校時代、なけなしのバイト代をつぎ込んでいたのはたいていアルバムかコンサート。音楽雑誌はその目利き役でもある。ゆえに、おめあてはアルバム・レビューだ。
とくにミュージック・マガジンのそれはこれが充実していた。ブリティッシュやアメリカン、和製ロックは他の雑誌でじゅうぶんだが、ワールドミュージックやコンチネンタル・ヨーロッパものが紹介されていたのは当時、ミュージック・マガジンのみだったと思う。
ぼくはたまにキューバやブルガリアのラジオ番組をネットで聴いたりするが、これも10代の頃にミュージック・マガジンを読んでいた影響である。
いまでは、ほとんどのアルバムをiTunesで購入している。
これはこれで便利でリーズナブルなのだけど、物足りないのはライナーノーツ。買ってきたばかりのレコードに針を落としながら、ぼくはこれを読むのが大好きだった。加えて事前に音楽雑誌のアルバムレビューも読んでいる。すでに作品やアーティストに対して物語が出来ているのだ。このあたりがダウンロード音楽とぜんぜん違う。音を通じて見える風景も感性も。
たまにはタワーレコードでCDを買うのも悪くないと思った。
▲ だいぶじしんにはなれたけど、だんぼうがないのはさすがにつらいもんだね。だからもう、とうちゃんがいるときは、ずっとひざのうえでだんをとることにしたんだよ。
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