パチンコさえやらんかったら、死なんかったろうに・・
2006年のある寒い日、電話をかけてきた高校時代のクラスメートから、当時の同級生が自殺したことを聞かされる。 妻子もいたらしい。 名前を聞いてもすぐには思い出せない人物だが、やはりショックだった。
借金を返すために別のサラ金から借金をしていた、取り立てから逃れ、自分を追いつめているうちに死を選んだんだと、その友人はいう。
ドラマじゃあるまいし・・・
だが、現実だ。
日本の自殺者は年間3万2千人。
このうちお金に困って死んだ人は8000人もいる。 その大半は住宅ローンが原因(破綻者予備軍は1000万人くらいいる)というが、パチンコなどのギャンブルによる多重債務者も少なくない。
「立てばパチンコ、座れば麻雀、歩く姿は馬券買い」
その昔バクチ打ちを皮肉った流行言葉だ。 昭和30年代の日本では、パチンコは立ってするものだった。 座ればどうしても長くなる。 ギャンブルにうつつを抜かして労働意欲がそがれるからとイスの設置が禁止されていたのだ。 なるほど、昔の役人はなかなかまともな人が多かった。
日本では法律で換金を伴う賭博が禁止されている(刑法185条)。
これをやれば法律違反で逮捕される。 だから日本相撲協会から逮捕者が出たのだ。 金をかければ底がない。 賭博場を仕切る胴元に身ぐるみをはがされ、すべてを失う者は古今東西後を絶たない。 だから日本ではこれを禁止した。 人間は完全ではない。 弱さにつけ込まれないよう、ときに法の力が必要なのだ。
明らかに違法なパチンコが「金銭を伴わない遊戯」として堂々と営業できているのは、景品交換所がパチンコ店の外にある、というただそれだけのことだ。 「景品交換」というけれど実際に交換されるのは現金。 そもそも、お金に換えないことを前提にパチンコをする人がいるんだろうか? だとすればこれのいったいどこが合法なのかぼくにはさっぱりわからない。 賭博罪の疑いで誰か裁判に起訴したことがあるのだろうかと調べてみたら、そんな記録が全くないという。 なんだこれ?
パチンコ業界の監督官庁は警察庁である。
パチンコ台の試験は保安電子通信技術協会という団体がおこなっているが、その会長は代々警視総監が天下り取り仕切っている。 ついでに職員の3分の1を警察出身者が占める。 この協会、パチンコ台ひとつ検査するのに160万円くらい取るので、これで年間数十億円の売上げだ。 やれやれ警察はパチンコ業界と一蓮托生(いちれんたくしょう)なのだ。
賭博場を仕切っているのが警察だなんて・・・
ぼくはてっきりヤクザだと思っていたのに。
マスコミは沈黙しているが、実はパチンコが原因の自殺や他殺件数は後を絶たない。 我が子を殺す母親は生き物の中でも人間くらいのものだが、とくに日本では昨年67人も母親が子供を殺している。 理由はパチンコ、といえば意外だろうか? パチンコ人口のなんと3分の1は専業主婦なのだという。 パチンコ依存症は、免疫がないぶん、男性以上になりやすいのだ。
親が親なら、子も子である。同じ年、パチンコ代をせびる息子に母親が殺された事件が2件。 母親を殺したあと、財布を盗みパチスロを打っていたという。 これが人間か?
こんな事件はマスコミは喜んで飛びつくはずだ。
だがしない。 なぜか?
パチンコ業界がマスコミのスポンサーだからだ。
「カネで買えないものはない」とコメントしたホリエモンをあれほど叩きまくったマスコミである。 「たしかにそうなんだろう」とぼくはマスコミをみてそう思う。 この国の正義はカネを前にあっさり負けちゃうのだ。 それも合法とはいえないカネで。
いったい日本はどうなってしまったのだろう?
さて、あなたの家にユニクロの服が一枚はあるだろう。
いまや飛ぶ鳥落とす勢いのユニクロの年間売上げは8140億円(2010年度)。 けれどもそんな売上げまでかすんでしまうパチンコ店チェーンのマルハンの売上げは2.1兆円。 タレントだかモデルだかと6億円の挙式をあげたのはここの御曹司ではなかったか。 国税庁によればパチンコ業界の脱税率は50.3%。 ということは本当の売上げはさらにあるかもしんない。 コワい話である。 この売上げ、すべてはパチンコに負けた人たちの財布から出ているのだ。 総額21兆円。 実際にはこの倍はあるかもしれない。 でも誰も手を付けられない。 理由は察しのとおりである。
しかし韓国は違った。
当時ソウル市長だった現韓国大統領、李明博は言った。
「勤勉に、熱心に働いて幸せを見つけなければならないのに、これと反対の方向に向かわせるものだ。こんなもの(パチンコ)を国が許可し、この状況でどんなことが起きたか? 経済が厳しくなればなるほど、こんなものが盛んになるのは心配だ。」
なかなかまともな大統領である。 マスコミもこぞってパチンコ業界を叩いた。 政治家も動いた。 警察も検察もみんな動いた。 パチンコをつぶす方向へ。
当時、韓国のパチンコ市場は3兆円だった。 パチンコが禁止されたあと、このお金が市場に流れた。 結果、いまの韓国の成長は目覚ましい。 クルマの販売台数も伸びた。 もちろんパチンコを禁止しただけではないだろうけれど、同じことが日本で起こったらどうなるだろう? なにしろ、21兆円である。 いや、もっとあるだろう。 パチンコ人口は1700万人以上。 彼らがパチンコに費やしているのはお金だけではない。 時間もまた、返ってこないもののひとつだ。
けれども李明博を讃えるのは控えたい。
彼は同じ口で、小沢さんとの会談で日本でパチンコ台の規制が行われていることに苦言を述べている。「おかげで在日同胞が苦境にあえいでいる」と。
在日同胞?
日本でパチンコ店を営業している経営者の8割は、なんと韓国と北朝鮮系である。 残り2割が日本と台湾。 つまり9割が外国人、ほとんどが朝鮮半島出身者で占められているのだ。 パチンコ台の規制があれば売上げが減る。 そのことを韓国大統領をして、規制を撤廃しろと言っているのだ。 パチンコはよくないと国内ではやめさせたのに、逆に日本ではパチンコをもっと流行らせようとする。
それだけ韓国にとって日本のパチンコはおいしいのだ。
おそらく北朝鮮にとっても。
いったいパチンコの売上げはどこに流れているのだろうか?
北朝鮮の核ミサイルが、主婦がサラ金で借りた金で製造されているとすれば、もうなんだかめちゃくちゃである。 それを日本の警察や政治家が保護しているのだ。 これが世の中的にフツーならば、たぶんぼくの頭が狂っている。
元旦の日、ぼくはパチンコ店に足を踏み入れてみる。
デパートは閉まっていても、ここは開いている。
二重ドアの向こうには滝のような轟音。
店内にはAKB48の音楽ががんがんに流れ、店内放送がアジテートするようにそれにかぶる。 そんな中でも、ぼくがもっとも驚くのはパチンコをやっている人たちの顔である。みな一様に押し黙り、暗い表情である。 蓮チャンで足下に箱が山積みされている客でさえちっとも嬉しそうではない。 それまで負けた額を思えば、喜んでもいられないのだろう。 意外に女性が多い。 おせちは食べたのだろうか?
最近のパチンコ店には入り口に顔認証システムが仕込まれているという。 オムロン製で一式500万円する。 なぜこんな装置が必要なのか? いわゆるパチプロに勝たせないためでもある。 台は遠隔装置で操作され、玉の出具合なんてお店のフトコロ三寸だ。 決して客の腕前ではない。 ましてや釘の打ち方でもない。 でなければ、前の人が5万円勝った同じ台で、次の人が18万円も負けるはずがない。 時代は変わった。 科学技術はときに人智をあざ笑うかのようだ。 変わらないのはパチンコをやめる人がいないだけだ。
パチンコの世界に、正義も信頼も愛情もない。
なにが「がんばれニッポン!」だ? とふと思う。
禁煙外来だってあるのだ。
禁パチ外来があってもよさそうなのに。
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