ここしばらく頭痛に悩まされている。
聞けば日本人の3分の一は何かしらの頭痛持ちなのだとか。 たしかドイツ人はそれ以上だったと記憶する。 ドイツと言えばアスピリン発祥の地だけど、安易に鎮痛剤に手を伸ばすのも考えものなのだろう。
折しもぼくと同年代の著名人が、くも膜下出血であっという間に命を落としている。 お気の毒だが、自分がああならないとも限らない。 頭痛はほおっておくと怖いのだ。 そんなこともあり、さっそく病院で検査を受けてみることにした。
どうやら脳には異常はないそうで、原因は神経だろうということになった。つまり肩こりなどに影響された「頭の筋肉痛」ではないかということだ。
筋肉痛ならほぐせばよくなるはず・・
そう思ったぼくは、ヘッドマッサージを施術してくれるところをあちこち探してみた。 あらためて探してみると、大都会東京ですらもヘッド専門店というのはありそうで、ない。 どちらかというと全身マッサージのオプションか、ヘッドスパのように癒し系頭皮マッサージが中心のお店しかない。 その手のお店は料金だってバカ高いし、ぼくのようなおじさんが入店するにはちょっと勇気がいる。 他の女性客に不快な思いをさせちゃうかもしんない。
望めば案外かなってしまうのが、ネット社会。
探していたお店は秋葉原そばにあった。
ヘッドマッサージ専門店 “リラックスヘッド” というのが店の名前だ。 WEBサイトで見る限り、店内は照明が落とされSPA系サロンとあまりかわらない。 だが、男性客も歓迎してくれてる、場所がおしゃれすぎないのでおじさんにも安心だ。
同WEBサイトには、こんな人におススメとある。
- 仕事が忙しくて、ストレスを抱えている方
- 思考が滞り、頭をスッキリとさせたい方。
- モニタの見過ぎで、目が疲れたり頭痛がする方。
- 仕事にやる気が起きずに困っている方。
- お顔が疲れで老けて見えると感じている方。
- 自律神経が崩れ、眠れないで困っている方 。
- 健全な髪の毛の育成を望む方。
それはまさにぼくのことではないか!
さっそく予約だ・・・で、その日に取れた。
開店してまだ半年という店内はさすがに真新しい。
家具も調度品も、それからお姉さんも・・・
▲ サロンの入り口
ぼくの担当になったのは高橋さんというなかなか美人さんであった。 けれども隠れマッサージファンのぼくとしては、女性でしかも美人であるというのはいささか困った問題である。 マッサージをしてもらっているときはおそらく、その人がするであろう表情のうち、もっともだらしない顔をしているにちがいない。 そんな顔を他人に見せてもいいのか? おじさんにもやはり恥じらいというものがあるのだ。
なんてことを考えつつ、飲み物をいただき、てきぱきとした高橋さんの施術前の問診を受ける。 「いろんな方がいらっしゃいますよ」と高橋さんは言う。 そう、ぼくも「いろんな方のひとり」なのだ。 恥じらったところで、八百屋に売られているトマトのひとつなのだ。 トマトがどんな顔をしようとどうでもいいことではないか。
メニューの中から『リジェ・60分コース』を選ぶ(7,800円)。 顔と頭とデコルテを丹念にやってくれるコースだ。 キャッチコピーに「女子力UP」とある。 「おじさん力はどうなんのかな?」と思っていると(実は、男性にも大人気!)というサブフレーズが目に留まる。
アロマの放ついい匂いのする店内を通り、個室に案内される。
これに着替えて、終わったら呼んでくださいね。といわれ、そそくさとワイシャツを脱ぎ、パンツをとり、用意されたTシャツとハーフパンツに着替える。
ベッドに横たわると、高橋さんはやさしくタオルを腰から下にかけてくれた。 そう、このコースは下半身の出番なしである。 間接照明がぼんやりと天井を照らし、環境音楽が静かに流れる。 実はこの音は真空管アンプによるものなのだという。 なるほど、どうりで瑞々しい。
「ちからかげんはいかがですか?」 とさっそく頭に指をたてながら高橋さんは訊く。 「はい、きもちいいです」とぼくは回答ではなく感想を言う。 それ自体が生き物のような指の一本一本を頭皮に感じながら、首筋がじんわり暖かくなる。 血が通いはじめたのだろうか。 やはり滞っていたのだ。
うつらうつらしかけたところで、こんどは顔だ。
世界共通のことだけど「顔マッサージ」は身体のどのパーツよりも値段が高めだ。 そのことを高橋さんに問うと
「ツボが密集してるからじゃないでしょうか」とのことだった。 なるほど、とぼくは思い「つまりツボ当たり単価は同じなのですね」と返すのだけど、あっさり無視される。 おじさんという生き物はつくづくめんどくさい。
顔を触られるのってなんて気持ちがいいんだろう?
目のまわり、ほお、こめかみ、耳のした。 もまれ、こすられ、ゆすられる。 リンパ腺に沿って老廃物がこそぎ落とされ、アゴのラインに心地よく何かが走る感触がある。 もうどうにでもして!という感じだ。 そして穏やかに意識を失う。 あるいは涎のひとすじもたらしただろうか。
▲ この感触はクセになります。 老廃物をデトックスしてリフトアップ。
「顔を横にしてください」
という声に起こされ、いわれるままに。
首から肩、肩甲骨にかけて丹念にもみほぐされる。
「ずいぶん凝ってますね」といわれる。 そう、ずいぶん凝っているのだ。 だから頭痛だってする。 顔だってむくんでいたかもしれない。
「はい。どうもお疲れさまでした」といわれ、施術終了。
お疲れなのはむしろ彼女のほうである。 ぼくは弛緩しながら涎を垂らしていただけである。 もう少しやってもらいたいなあという残望感を覚えつつ、お礼を言う。 頭痛はいつのまにかとれていた。 マッサージは偉大である。
終わったあと、髪はドリフのコントのようにバクハツしているようだった。 さっそくパウダールームへ案内され鏡をのぞく。 あんのじょう顔が1.5倍くらいになっていたが、それよりなんだか目元がぱっちりしているのに少しおどろく。 しかもいくぶん凛々しくなったような気がする。 たしかに、ほおに手を当てるとスッとする。 小顔効果というのはほんとうかもしれない、と思った。
あれ以来、頭痛はピタリと止んだ。
すぐにリバウンドするだろうと思っていた顔ヤセ状態もまだ持続している。 「マッサージが気持ちいいのはやってもらっているときだけ」というのが経験上ぼくが学んだことだったから、これはちょっと意外だった。 ていうか期待以上だった。
ストレスは「脳」を確実に疲れさせる。
あとから知ったことだけど、脳の疲れは頭の疲れとなって表出し、全身へ気だるさとなって自律神経を狂わせるなどの悪影響があるのだという。 頭の疲れは心の疲れに直結し、心だって折れやすくなる。 ストレスは溜まるほどに心が弱くなってくるのはこのためだ。
とすれば、ヘッドマッサージは心にも効くはずだ。
ぼくは常に思うのだけど、世のオジサンたちはストレスの発散方法のバリエーションに乏しい。 酒を飲むか、タバコを吸うか、女の子のいる店で自慢するか、せいぜいカラオケで歌うくらいである。 ストレスは発散していそうで、実はよけいにストレス耐性を弱くもしている。 とても本質的な解決策ではなさそうである。
女性はその点ストレス解消がうまく見習うべきところが多い。 ジムやヨガがそうだし、温泉旅行やSPAがそうだ。 いまは男性より女性の利用のほうが圧倒的に多いが、特に今回ぼくが経験したヘッドマッサージはおじさん達こそ利用すべきだと思う。 恥ずかしくないし、担当の女の子たちはとても明るくやさしい。
自分が思っているよりもずっと疲れているのがオジサンという生き物である。 たとえ頭はぴかぴかに禿げていても、暗闇を照らす明かりにはならない。 だいいち日本を暗くしているのは、ぼくたちオジサンたちなのだ。
日本を元気に、オジサンを元気に。
▲ これが深頭筋マッサージです 【提供:Relaxhead】
■ お店紹介 『RELAX HEAD』のWEBサイト
数あるマッサージやさんを試してみたけど、ここはわりとおすすめ。 ストレスや頭痛・肩こりの軽減どころか、頬のリフトアップも期待大です。1〜2週間は持続するとのことです。まあ個人差はあるでしょうけど。
場所は地下鉄末広町2番出口の目の前のビル10F。
今回のイラストの指にぜひご注目。こういうパーツこそ、写真でなくイラストで表現してみたかったんです。力強い躍動感、伝わりましたでしょうか? 女性の指にしては少々ごつくなっちゃったけど。
人気ブログランキングへ
下降中 応援クリックを
最近のコメント