ひどく奇妙な夢をみた。
通勤で使ういつもの駅。 朝のラッシュ。
ぼくは改札を抜け、むかって右側のエスカレータを
あわただしく駆け登り、ホームにでる。
なんの変哲もない、いつもの光景。 太陽が眩しい。
正面から斜めに陽光がさしこんでくる。遮るものはない。
しばらくして、そこに電車が滑り込んでくる。
が、なにかがおかしい。
ラッシュ時にしては車内があまりに空いているのだ。
そこでぼくは気付く。
ぼくがいるのは、下り車線側のホームではないか。
電車越しに反対車線のホームに目を向ければ、
なるほど大勢の人たちが電車を待っているのが見える。
上り車線はどうやらあっちのほうらしい。
はて、いつの間に間違えたのだろう?
慌てて、先ほどのエスカレータを再び降りて、
こんどは反対側のエスカレータをバタバタとのぼり、
ホームに出る。 そして概視感。
さっきまでいたはずの電車を待つ人たちの姿はなく
やがて到着した電車は、空いていた。
ぼくはたまりかね、そばの駅員さんに訊く。
渋谷方面はどちらでしょうか? と。
ところが駅員さんは、みるみる表情が険しくなり
「どうもあなたは駅を間違えておられるようじゃ」という。
若いのに老齢な感じのするものの言い方だった。
毎日使う駅だ。 間違えるわけがない。
乗る車線を間違うはずもない。
同じ光景だし、おまけに太陽の光が差す方向も同じだ。
太陽?
気がつけばあたりはもう夕方で、少し赤みのかかった陽光が
やはり斜め前から差し込んでいる。 駅員もいない。
見れば、線路があるあたりに川が流れ、水路になっている。
きっと満潮になったので、近くの多摩川が溢れたのだろう。
どうりで電車も来ないわけだ。 とぼくは納得する。
ふと反対側のプラットフォームを見やれば
そこを自転車で走る男の姿が見える。
何でこんなところに自転車が? と思ったそのとき
男は不意にバランスを崩し、よろよろと黄色い線をまたぐ。
あぶない!
男は自転車ごと線路だった水路に落ちてしまった。
ばっしゃーん!
意外と大きな水柱が上がり、
水滴の一部がぼくの頬にあたり、ひやりとした感触が残る。
・・・と、そこで目が覚めた。
あまりに生々しかったので、頬が濡れてやしないかと
思わず顔に手をやったほどだった。
朝の支度を終え、いつものように家を出る。
夢で登場したその駅から電車に乗り、都心へと向かう。
相変わらずの寿司づめ状態のまま30分ほど走っただろうか
とつぜん、ブザーとともに電車が急停車する。
お急ぎのところたいへんご迷惑を・・・
車内アナウンス、人身事故だという。 おそらく自殺だろう。
しかし人身事故があった駅の名前を耳にしたとたん
ぼくは一瞬凍りつく。
その駅こそは、夢に出てきた「いつもの駅」であった。
死亡したのは、ぼくと同じ歳の男性。
みんなの見ている前で、ホームに走ってきた電車に
その身を投げたのだと、ニュースに載っていた。
ぼくがそこに立っていたわずか30分後のことだった。
これは偶然だろうか?
それとも・・
線路のそばには近づかないようにしましょう
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