朝の通勤ラッシュ。 超満員電車。
それにしても、
よくもまあこれだけ人がくっつきあえるもんだなあと感心する。
ぼくにとって満員電車は、まだ日常ではないのだ。
そのことに、すこしだけ安心する。
途中、駅から乗ってきた人たちに、どっと押される
が、つかまるべきつり革はない。
座席をまたぎ、おいかぶさるような格好で、窓枠に手をつく。
そこに座る女の子をまもるようなかたちで。
その子は化粧をしていた。 状況におかまいなく。
アイラインをばっちりメイクしている。
もう何駅ぶん、やっているのだろう?
みるみるうちに、目もとが立体的になり、
輪郭がはっきりしてくる。 まるで魔法のようだ。
「魔法だったら使える・・」
そういって、キスをするシーンが昔のドラマにあった。
バブル華やかし90年初頭。 『東京ラブストーリー』。
なつかしい小田和正のヒット曲。
ドイツで平和に暮らしていたころ、日本から送られてくる
そんなビデオを、皆でたらい回ししていたのが思いだされる。
その子の化粧はひたすら続く。
その頭上をぼくは窓枠に手をつき、背筋に力を入れ、ふんばる。
まるで、終わるまでその子をまもっているかのよう。
電車の中で化粧をする女性を、非難する人は多い。
そんな行為を、世間は嫌う。
『goo ランキング』でみても、そうである。
「恥ずかしいからやめて欲しい彼女の行動ランキング」
1位 電車の中で化粧をする
2位 食べ方が汚い
3位 過去の悪行を栄光として語る
4位 飲食店などでミスをした店員をどなりつける
5位 「オレ」「お前」など男言葉を使いたがる
6位 男子の前でだけカワイイキャラに変わる
7位 知ったかぶりをする
8位 ネット用語を多用する
9位 「私、いくつに見える?」としつこくたずねる
10位 電車やバスの空いている席にダッシュで座る
女性は化粧のため、平均30分も、男性より早く起きるときく。
たいへんなのだ。 電車で化粧するくらいいいじゃないかと、
少しだけ思う。少しだけだけど。
ぼくはむしろ 4位の「店員をどなりつける」に注目してしまう。
たとえ言っていることがどんなに正しくても、やっぱり
客の立場を利用した損大な態度は、その人を小さく見せる。
世の男たちは、そんな彼女を見て
「結婚したら、きっと自分に向けられる行為のはず」
だと見抜いてしまうものだ。
ともあれ、
魔法にかけられているのなら、それもいい。
それがロマンチックなおじさんの、生きる術である。
教育的指導も、過ぎれば騒音なのかも
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