初めて海外でまともなホテルに泊まって以来、密かにズボンプレッサーにあこがれるようになった。
正確には「ズボンプレッサーのある生活」に憧れていた。
いつかオトナになったら、こういうのが家にあるんだろうな。
その程度の、ふわっとした憧れだ。
それなりのホテルには、たいていズボンプレッサーが置いてある。 ホテルのランドリーサービスもあるけどお急ぎならご自身でどうぞ、ということなのだろう。 折り目正しい客にふさわしい自由裁量を与えるという、ホテル側の余裕のようなものを感じる。
使われているのは、ほとんど英国コルビー社製。
フロントボードは木製で、ちゃんとトリムがはいっている。
もちろん、縦置きである。
そう、ズボンプレッサーは、ちゃんと立ってなくちゃならない。
ビジネスホテルで貸し出しているような平台タイプではなく。
初めてそれを見てから20年近くが経ち、数ヶ月前
ようやく我が家にもズボンプレッサーがやってきた。
きっかけは忘れたけれど、迷わず選んだコルビー社製。
同じ英国製のよしみだろうか、ぼくにずいぶん昔に買ったミニクーパーを想い出させる。 きっと、スペックでは決して表現できない精錬で頑固な主張が、英国製には備わるのだろう。
帰宅して上着をとり、脱いだズボンに軽くスプレーをあてる。 コルビーのフロントボードを開き、これをセット。 一連の流れはためらいなく行われる。
タイマーは30分。
ちょうどシャワーを浴び終わるころに、仕上がっている。
ぴしっとプレスされたズボンに、毎朝あしを通す幸福感。
ふわっとした憧れは、憧れのままに部屋に漂う。
■ これがそのズボンプレッサー
CORBY Model 4400JTB 機能的には国産とどっこいどっこいなんだろうけど、なんといっても気品がそこはかとなく漂います。木目調が部屋の家具ともマッチ。 こういうのを贈れる女性ってセンスあると思います。
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