「鏡の前で服を選んでいるとき」というのは、実はものすごくストレスがかかっているんだそうだ。
そろそろ家を出ないと間に合わないのに、着ていく服がなかなか決まらない。 今日のために買ったブラウスはすでに肩まわりが窮屈で、これに合わせるのに理想的なスカートは意外に少ない。 ベッドやソファのうえに、まるで青空市場のように広げられる衣料の数々。しかもこういう日に限って、化粧のノリが悪かったりする。
なるほど、ストレスたっぷりなかんじだ。
女性の場合、男よりもずっとアイテムや組み合わせバリエーションが多そうだから、それぶん余計にたいへんに違いない、と思う。
せっかくのデートをドタキャンしたくなる気持ちもわかる。 それを楽しみにしていれば、なおのことストレス度は上がるのだろう。 男はデートに遅れてくる女性を、むしろありがたく思うくらいでちょうどいい。
もちろん男だって、「鏡の前のストレス」はある。
ぼくについていえば、こと10代の終わりから20代にかけて鏡の前でずいぶん悩んだような気がする。 たぶん理想の自分と、鏡に映る自分のギャップに悩まされていたのだ。
ところが歳をとるにつれ、そうした理想を無理に追わなくなってきた。
どうやったって自分は自分なのだからと、身の丈にあったものをつけるようになるのだ。 「魂の解放」とは、こういうことを言うのだろう。 しだいに「自分を少しでもよく見せるファッション」 よりも、「自分を自然にだせる」ものを選ぶようになる。
ベテランのミュージシャンや俳優を見ていて思う。 彼らが身につけるものはシンプルであるほど美しい。 結局のところ、自信というのはどんな衣服にも勝るのだ。
そういった意味で、鏡を見ることは大切だと思う。
迷う時間が少しずつ減ることを確認するために。
だといいのだけど・・・
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