この日本にも、スタイルのいい男が増えた。
細身のスーツをばしっと着こなし、お尻だってきゅっと上がっている。 20代はもちろん、30代、40代とおぼしき人たちもいる。 もちろんそうでない男たちもいるにはいるけど、少なくても10年前、20年前の街の風景はこうではなかった。 当時のファッションセンスを割り引いても、いまほど洗練されてはいなかっただろう。
どうもビジネスマンはキレイになる傾向にあるようだ。 メタボ、メタボと世間は騒がしいし、世界の先進国はどこもデブが増えているのだけれど、日本においては肥満度はむしろ減っている。 もしかしたら、それは細身スーツが流行しているかもしれない。 しまったウエストや美脚はもう、女性だけが追う目標ではないのだろう。
驚いたのは男性インナーウエア。
足首を細く見せる、ウエストを細く見せる、お尻を上げて見せるなど、補正機能型が各社から発売していて、しかも目標を大幅に超える売れ行きなのだということだ。
そこまでしてモテたいのか!?
などと思うのは、ぼくがオヤジだからなのだろう。
さまざまな市場調査資料に触れるにつけ、実はそうでもないらしいことがわかってくる。 できるスマートなビジネスマンを目指すには、まず「周囲から浮かないこと」が大事なんだそうだ。 個性的ではなく、当たり障りのないキレイめのスーツを着こなすことで、言わば「空気が読める」人間だということをアピールしているのかもしれない。
周囲と衝突するリスクを極端に避ける傾向があるのは、もともと日本人にありがちである。 「香りが色めき立つ」よりも、無味無臭であることが重要なのだ。 こうしてできるだけ角を立てないようにして、周囲に受け入れてもらう。 それが近年、こと小泉政権以降、増殖しつつある日本人のコミュニケーションのあり方である。 個性を表出して浮くより、周囲に溶け込んでいるほうが、なにかと自己責任を問われやすい環境においては都合がいいのだろう。
過当競争はむしろ男たちから個性を奪った。
何よりもリスク軽減。 キレイめの男たちが増えている背景には、わりと後ろ向きな心理が見え隠れする。
「せーかいでひとつだけのは〜な♪」
そう歌いながらも、結局のところ「たくさんある花のひとつ」でしかない悲しさ。
キレイな男たちは確かに増えた。
でもそれがカッコいいかどうかは、また別の話だ。
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