「はだか」を表現する日本語は意外に多い。
ヌード、すっぽんぽん、生まれたままの姿、一糸まとわぬ姿、なんてのがそうだ。 子供の頃は、「はだか」というコトバだけで照れるほどだったけれど、 「好きな女の子のハダカが見たい」 というのは子供もオヤジも、男ならば異常でも何でもない。
ヨーロッパには、いたるところに「ヌーディストビーチ」なる場所がある。 ドイツでは”FKK(エフ・カー・カー)” と呼ばれていて、そこでは老いも若きも男も女も、そろって「すっぽんぽん状態」。 もっともFKKはビーチだけではなくて、河川敷にもあるし、山の中にもある。 おそらくはナチュラリストの集団が「健康にはハダカが一番」をスローガンにあちこちこしらえたのだと思う。
ぼくが生まれて初めてFKKにいったのは、ハタチのときだった。 場所はデュッセルドルフ郊外にある「ウンターバッハ・ゼー」と呼ばれる湖。 周囲を森林に囲まれ、キャンプ場や広い公園が偏在する。 季節は6月、一年でもっとも日照時間が長い季節だ。 真っ青な空から降りそそぐ太陽が湖面にまぶしく反射し、頬を撫でる風も心地よい。
そこへぼくを連れてきてくれたドイツ人達(若い男女)は、一秒でも長く陽光にさらしたいようすでさっさと服を脱ぎ始める。 最初だけにぼくはさすがに照れちゃうんだけど、眼前に広がる(転がる?)肉体のあれこれに、やがて「服を着ている方がむしろ恥ずかしい」気分にすらなってくる。 人間ってつくづく環境に順応しやすい動物なんだなあ、と思う。
あたりの光景はなんだか「人類のあけぼの」を思わせるし、健康的な「アウシュビッツ収容所」のようにも見えた。
■ 乗馬するのも素っ裸
気分はもう、ギャートルズですね。
「日本人だって公衆浴場では、男も女も一緒にハダカじゃないか?」
と不意に言われ、それは江戸時代の話だろう? と反論する間もなく、ぼくも最後の一枚をずりおろす。 ぷら〜んと太陽の下にさらされる陰部。 でも、直射日光を浴びているそれはもう、陰部とは呼べないような気がする。
近くでソーセージを焼く香ばしい匂いが、タンポポの種と一緒に漂っている。 それがまた、微妙なリアル感があった。 (あちちち・・・)。 ここでさらに鮑なんて焼いていたら、それこそそろって共食いの様相だ (いててて・・・)。
■ 冬山登るも素っ裸
「ホラ見てごらん、朝日が昇っていくよ」
「寒いっちゅーのっ!」
そんなわけで、もともと日射量の少ないドイツや北ヨーロッパの住民は、こんなふうに太陽のもとにハダカをさらす。 それはもう「日光浴」というよりは、「充電」といった感じだ。 中には家族親戚がそろってサンドイッチ持参でやってくる、という姿も見られる。 そこには羞恥心もなければ照れもない。 一家そろって露出狂というわけでも(たぶん)、ない。
■ 自転車乗るのも素っ裸
家族そろってのどかな光景です。 サドルがひんやりと・・・
以上の写真は、こちらからいただきました。↓
写真提供:「FKKオンライン(ドイツ語)」ノーカット版が見たい人はここで。
「ムラムラッと欲情することはないんだろうか?」
と、ナスティなあなたは思うかもしれない。 もちろんぼくも現場に立ち会うまではそう思っていた。 なんとなく60年代のフラワームーブメントのようなものを想像したりもした。 フリードラッグ、フリーセックスのそれだ。
幸か不幸かそれは、ない。 もちろんトドやアザラシのような裸体よりは、キレイな若い女性のハダカのほうが目の保養にはなるけれど、かといって「カラダが反応」することはなかった。
結局、そういうメカニズムなのだろう。
どんなにセクシーダイナマイトな女性でも、どどーんとぼくの目の前に「生まれたままの姿」で登場されるよりは、少し恥じらいながら脱いだりしてくれたほうが「その気」になるし、多少の抵抗(あくまでも多少です!笑)があったほうが、なんとなくうれしい。 パンツだってオッパイだって、見せられるよりは偶然見えちゃった時の方が、なんというか「お得感」がある。 「達成感」すらある。 「ハダカであることが前提」のヌーディストビーチでは、太陽の光のせいもあってか、男はオオカミにも悪魔にもなれないのだ。
以来、ぼくは何度かFKKに行ったし、ローマ風呂(男女混浴)やスキー場やジムに併設されているサウナ(これも男女混浴が多い)にもことあるごとに利用した。
人前でハダカになることに抵抗がないのは、もしかすると「ハダカを着る」という感覚なのかもしれない。 「脱ぐのに着る」のは矛盾した言い方だけど、場所が場所ならハダカもりっぱなユニフォームということなのだろう。
とにかくあらゆる公衆すっぽんぽん体験を通じ、ぼくは民族を代表して自信すら持つことになった。 日本人のアレやソレはドイツ人やその他の白人に比べて、それほど見劣りはしないんです。
でも、明らかに見劣りするのは「ヒップ」ですね。
てなわけで日本の皆さん、これからは「尻」を鍛えましょう!
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